最新重要判例解説(19);最高裁判所平成21年3月31日判決

1 事案
平成13年9月1日,A農業協同組合(以下,「A農協」)ら4つの農協が合併し,B農業協同組合(以下,「B農協」)を新設した。
その際の合併契約に際して,A農協役員らと合併前の各農協との間で,A農協の貸倒引当金が過少に計上された場合はその引当不足額をA役員がB農協に填補する旨の合意(以下,「本件賠償条項」)があった。
合併後に,A農協が計上した貸倒引当金に約3億8500万円の不足があったことが判明したことから,B農協の組合員であるX1ら(原告・控訴人・上告人)は,平成15年6月26日,本件賠償条項に基づき,A農協の役員(理事・監事)であった者らに対して,農協の貸倒引当金不足額等の支払を求める訴訟の提起を請求する書面(以下,「本件提訴請求書」)を,B農協に送付した。
このとき,本件提訴請求書には,本来宛先とされるべき監事ではなく,代表理事組合長であるY1(被告・被控訴人・被上告人)が代表者として記載されていた。
Y1は,同月30日の理事会でこの書面を読み上げ,理事・監事とともに訴訟提起の要否についての審議を求め,同年7月23日には一旦監事立会いの下で訴訟提起の決議をした。しかし,B農協の財政状況が悪化し,内部で紛争を行っている場合ではなくなったとして,同年12月22日には提起しない旨の決議をし,結局その後訴訟を提起してなかった。
そこで,X1らは,平成16年2月17日,Y1~Y6及びY7ら(A農協の役員であった者またはその相続人。Y1~Y6はX1の提訴請求当時にB農協の理事であったが,Y7らについてはそうではなかった。被告・被控訴人・被上告人)に対して,A農協の貸倒引当金不足額をB農協に支払うよう求める組合員代表訴訟を提起した。
第1審(前橋地判平成19年4月25日)は,Y1~Y6について適式な提訴請求がされたことにはならないとして本件訴えを却下,原審(東京高判平成19年12月12日)もこれを支持した。
  
2 判旨
一部破棄自判,一部破棄差戻し
ⅰ 「平成17年法律第87号による改正前の農業協同組合法(以下,単に「農協法」という。)39条2項において準用する同改正前の商法275条ノ4によれば,農業協同組合の理事に対する組合員代表訴訟を提起しようとする組合員の提訴請求を受けることについては,監事が農業協同組合を代表することとなる。
 しかし,上記のとおり監事が農業協同組合を代表することとされているのは,組合員代表訴訟の相手方が代表理事の同僚である理事の場合には,代表理事が農業協同組合の代表者として提訴請求書の送付を受けたとしても,農業協同組合の利益よりも当該理事の利益を優先させ,当該理事に対する訴訟を提起しないおそれがあるので,これを防止するため,理事とは独立した立場にある監事に,上記請求書の記載内容に沿って農業協同組合として当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを判断させる必要があるからであると解される。
そうすると,農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,農業協同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を農業協同組合に対して送付した場合であっても,監事において,上記請求書の記載内容を正確に認識した上で当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったといえるときには,監事は,農業協同組合の代表者として監事が記載された提訴請求書の送付を受けたのと異ならない状態に置かれたものといえるから,上記組合員が提起した代表訴訟については,代表者として監事が記載された適式な提訴請求書があらかじめ農業協同組合に送付されていたのと同視することができ,これを不適法として却下することはできないというべきである。」。
ⅱ B農協の代表理事組合長であった被上告人Y1は,平成15年6月30日に開催された同農協の理事会において,出席していた理事及び監事に対し,本件提訴請求についての審議を求め,その際,本件提訴請求書の記載内容を読み上げたというのであり,その結果,同農協は,同年7月23日に開催された理事会において,いったんは,その記載内容に沿ってA農協の理事及び監事であった者に対する訴訟を提起することを決議したというのである。そうすると,B農協の監事には,同年6月30日の時点で,本件提訴請求書の記載内容を正確に認識した上で被上告人Y1らに対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったというべきであるから,本件訴えは,本件提訴請求の時点において同農協の理事であった被上告人Y1らに関する部分についても,適式な提訴請求があったのと同視することができ,これを不適法として却下することはできないというべきである。

3 解説
本件では,本件提訴請求書の宛先が本来の対象である監事ではなく代表理事であったことから,適式な提訴請求がなされたか否か,ひいては,本件代表訴訟が適法であるか否かが問題となった。 
この点について,本件判決は,監事がその請求書が提訴を求めている訴訟を提起するか否かについて検討する機会を実質的に得たのであれば,宛先が間違っていたとしても不適法とはならない旨を示した。

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