最新重要判例解説(21);最高裁判所平成20年2月19日判決

1 事案
亡A(原告・被控訴人・被上告人。事故当時76歳。死亡により,Xらが訴訟承継)は,普通自動二輪車を運転中に,B車と衝突し,傷害を負って入院した。
B車については,これを被保険自動車とする自賠責保険契約が,B車所有者とY(被告・控訴人・上告人)との間で締結されていた。この事故による亡Aの損害額は合計337万9541円であり,自動車損害賠償保障法(以下,「自賠法」)に定める保険金額は120万円である。
C(大阪市長)は,老人保健法(平成17年法律77号による改正前のもの。現在,同様の制度は「高齢者の医療の確保に関する法律」に引き継がれている)に基づいて,亡Aの傷害に対して,医療の給付を行い,その価額として206万4200円を支払った。これにより,Cは,同法41条1項に基づいて,支払った医療価額の限度で,事故に係る亡AのYに対する自賠法16条1項に基づく損害賠償額の支払請求権(以下,「直接請求権」)を取得した。
D(大阪府国民健康保険団体連合会)は,Cが老人保健法により取得した請求権に係る損害賠償金の徴収等の事務についてCから委託を受けた。そして,同損害賠償金を徴収するため,Yに対して,自賠法16条1項に基づき,自賠責保険金額の限度で医療価額の支払を求めた。
他方で亡Aは,その翌日に,Yに対して,同項に基づいて,損害額のうちCからの医療給付を受けたことによっては補填されない損害額(自賠責保険金額の120万円を越えていた)の支払を求めた。
これらに対して,Yは,亡AとDの請求を按分して支払うとしたので,亡Aは,Yに対し,保険金額120万円の限度で損害賠償額の支払を求める訴訟を提起した。
第1審(大阪地判平成17年12月19日)・原審(大阪高判平成18年6月2日)ともに,亡AはCに優先してYから自賠法16条1項に基づき未填補損害額の支払を受けることが出来るとして,賠責保険金額120万円全額の支払いを求める亡Aの請求を認容した。
なお,第1審において,YがCに対して訴訟告知をしたが,Cは参加しなかった。

2 判旨
上告棄却。
「被害者が医療給付を受けてもなおてん補されない損害(以下「未てん補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は,他方で,市町村長が老人保健法41条1項により取得した直接請求権を行使し,被害者の直接請求権の額と市町村長が取得した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても,被害者は,市町村長に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。
(1)自賠法16条1項は,同法3条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときに,被害者は少なくとも自賠責保険金額の限度では確実に損害のてん補を受けられることにしてその保護を図るものであるから(同法1条参照),被害者において,その未てん補損害の額が自賠責保険金額を超えるにもかかわらず,自賠責保険金額全額について支払を受けられないという結果が生ずることは,同法16条1項の趣旨に沿わないものというべきである。
(2)老人保健法41条1項は,第三者の行為によって生じた事由に対して医療給付が行われた場合には,市町村長はその医療に関して支払った価額等の限度において,医療給付を受けた者(以下「医療受給者」という。)が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得する旨定めているが,医療給付は社会保障の性格を有する公的給付であり,損害のてん補を目的として行われるものではない。同項が設けられたのは,医療給付によって医療受給者の損害の一部がてん補される結果となった場合に,医療受給者においててん補された損害の賠償を重ねて第三者に請求することを許すべきではないし,他方,損害賠償責任を負う第三者も,てん補された損害について賠償義務を免れる理由はないことによるものと解され,医療に関して支払われた価額等を市町村長が取得した損害賠償請求権によって賄うことが,同項の主たる目的であるとは解されない。したがって,市町村長が同項により取得した直接請求権を行使することによって,被害者の未てん補損害についての直接請求権の行使が妨げられる結果が生ずることは,同項の趣旨にも沿わないものというべきである。」 

3 解説
本件判決は,従来の保険実務であった按分払いを否定したものとして,実務に大きな影響を与えるであろう判例である。
自賠責保険の保険者に対して,①被害者からの直接請求と,②その直接請求に代位した老人健康保険の保険者からの求償が競合し,両者の請求額の合計が自賠責保険金額を超過するという場合について,従来の実務は①②いずれも同質の債権で優劣はないとして,案分額でそれぞれに対して支払うというのが実務の運用であった。
それに対して,本件判決は,②によって①の行使が妨げられることは自賠責法・老人保健法の趣旨にそぐわないとして,①を優先させたのである。

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