最新重要判例解説(22);最高裁判所平成20年1月24日判決

1 事案
Aは,平成7年,公正証書により,その遺産を実子であるY1及びY2,並びに,妻であるBに,それぞれ相続させる旨の遺言をした。
その後,平成8年2月9日に,Aは死亡にした。
Aの相続人には,B・Y1(被告・被控訴人=控訴人・被上告人)・Y2(被告・被控訴人=控訴人・被上告人)の他に,もう1人の実子X1(原告・控訴人=被控訴人・上告人),Aの養子でX1の夫X2(原告・控訴人=被控訴人・上告人),同じくAの養子でY1の夫Cがいた。
Xらは,平成8年8月18日,YらおよびBに対して,遺留分減殺請求権を行使し,YらおよびBがAから前記遺言によって取得した遺産につき,X1X2の遺留分である20分の1に相当する部分を返還するよう求めた。
Xらは,平成9年11月に本訴を提起し,遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続等を求めた。
これに対して,1審弁論手続期日である平成15年8月にY2が,同期日である平成16年2月にY1が,それぞれにおいて,Xらに対して民法1041条により価額弁償をする旨の意思表示をした。
Xらは,これを受けて,平成16年7月16日の1審口頭弁論期日において,訴えを変更して価額賠償請求権に基づく金員支払を求め,その附帯請求として,相続開始日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
第1審(名古屋地判平成16年11月5日)は,Xらの価額弁償請求を一部認容したが,附帯請求については,Xらが遺留分減殺請求をした日の翌日から支払済みまでの限度で認容した。
原審(名古屋高判平成18年6月6日)は,価額弁償に関する2つの最高裁判決(最判昭和54年7月10日,最判平成9年2月25日)を重視して,本件のような場合にも,遺留分権利者は裁判所が受遺者に対し同条により価額を定めてその支払いを命じることによって初めて受遺者に対する価額弁償請求権を取得するものとし,附帯請求につき1審判決を変更して,判決確定の日の翌日から支払済みまでの限度で認容すべきとした。

2 判旨
一部破棄自判,一部上告棄却。
「①受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け,遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には,当該受遺者は目的物の返還義務を免れ,他方,当該遺留分権利者は,受遺者に対し,弁償すべき価額に相当する金銭の支払を求める権利を取得すると解される(......最高裁昭和54年7月10日第三小法廷判決〔民集33巻5号562頁〕,......最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決〔民集51巻2号448頁〕参照)。②また,上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても,遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには,遺留分権利者は,受遺者に対し,遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし,それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最高裁昭和......51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁,前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。③そして,上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当である。④したがって,受遺者は,遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で,遺留分権利者に対し,適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり,同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決参照),同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。⑤そうすると,民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は,上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,受遺者に対し弁償金の支払を請求した日の翌日ということになる。」
Xらは,Yらが価額弁償をする旨の意思表示をした後の平成16年7月16日の1審口頭弁論期日において,訴えを交換的に変更して価額弁償請求権に基づく金員支払を求めることとしており,この訴えの変更により価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,弁償金の支払を請求したというべきである。

3 解説
本件判決は,遺留分権者の価額弁償請求権について,価額弁償請求権を行使する旨意思表示をしたときに確定的に取得し,かつ,受遺者に対して支払いを請求した日の翌日であるとして,価額の確定時がそれと異なったとしても取得時期には影響しないとした。

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