重要判例解説(23);最高裁判所平成20年1月28日判決

1 事案の概要
本件は,平成9年に経営破綻したA銀行から債権譲渡を受けたX会社が,X銀行の元取締役Yらに対し,融資に際し善管注意義務違反等があったなどと主張して,平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)266条1項5号に基づく損害賠償を請求する事案である。争点は,旧商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権が,商法522条にいう「商行為によつて生じた債権」として5年の消滅時効期間にかかるか否かである。
一,二審とも,旧商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権は,商行為たる委任契約そのものによって生じたものということはできないから,商法522条の適用はなく,その消滅時効期間は民法167条により10年と解すベきであると判断した。

2 判旨
上告棄却(確定)。
「株式会社の取締役は,受任者としての義務を一般的に定める商法254条3項(民法644条),商法254条ノ3の規定に違反して会社に損害を与えた場合に債務不履行責任を負うことは当然であるが(民法415 条),例えば,違法配当や違法な利益供与等が会社ないし株主の同意の有無にかかわらず取締役としての職務違反行為となること(商法266条1項1号,2号)からも明らかなように,会社の業務執行を決定し,その執行に当たる立場にある取締役の会社に対する職務上の義務は,契約当事者の合意の内容のみによって定められるものではなく,契約当事者の意思にかかわらず,法令によってその内容が規定されるという側面を有するものというべきである。商法266条は,このような観点から,取締役が会社に対して負うべき責任の明確化と厳格化を図る趣旨の規定であり(最高裁平成8年(オ)第270号同12年7月7日第二小法廷判決・民集54巻6号1767頁参照),このことは,同条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任が,民法415条に基づく債務不履行責任と異なり連帯責任とされているところにも現れているものと解される。
これらのことからすれば,商法266条1項5号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は,取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるが,法によってその内容が加重された特殊な責任であって,商行為たる委任契約上の債務が単にその態様を変じたにすぎないものということはできない。また,取締役の会社に対する任務懈怠行為は外部から容易に判明し難い場合が少なくないことをも考慮すると,同号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任については商事取引における迅速決済の要請は妥当しないというべきである。したがって,同号に基づく取締役の会社に対する損害賠償債務については,商法522条を適用ないし類推適用すべき根拠がないといわなければならない。
以上によれば,商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,商法522条所定の5年ではなく,民法167条1項により10年と解するのが相当である。」

3 解説
本判決は,平成17年改正前商法266条1項5号による取締役の会社に対する責任には商事消滅時効にかかる商法522条の適用がなく,その消滅時効期間は民法167条1項により10年であることを明らかにした最初の最高裁判所判決である。同号の責任は,会社法制定後の会社法上の取締役の対会社責任との関係においても先例的価値を有するものである。
本号に基づく会社の取締役に対する損害賠償債権の消滅時効期間を5年と解すべきであるという論旨の根拠は,①会社は商人であるから,会社と取締役との任用契約は附属的商行為である,②本号に基づく取締役の責任の性質は委任契約上の債務不履行責任であって,法定責任ではない,③商行為たる委任契約上の債務の不履行による損害賠償債権は商行為によって生じた債権である,というものである。
旧商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間を民法167条1項の一般原則により10年と解するものが多数説であり,本判決も多数説を是認する形となった。
会社と取締役との任用契約が商行為かという点については,最判平成4年12月18日民集46巻9号3006頁が,取締役の会社に対する報酬請求権の遅延損害金の利率を年6分としていることなどに照らし,これを肯定するのが判例の立場といってよいと思われる。
そして,旧商法266条1項5号に基づく取締役の責任の性質については,本判決は,この場合に限定することなく,本号に基づく取締役の責任の性質は,会社と取締役とが委任関係に立つことを前提に取締役が受任者としての任務を懈怠したことによる債務不履行責任であるとした。
同号に基づく取締役の責任の性質が債務不履行責任であるとすると,契約上の債務の不履行を原因とする損害賠償債務は,契約上の債務がその態様を変じたにすぎないものであるから,当該契約が商行為たる性格を有するのであれば,商行為によって生じた債務に当たる旨を判示した最判昭和47年5月25日裁判集民106号153頁との関係が問題となる。この点につき,本判決は,取締役の会社に対する職務上の義務が,一般の契約上の債務と異なり,契約当事者の意思にかかわらず,法令によってその内容が規定されるという側面を有するものであること,旧商法266条は,民法の一般原則と異なり取締役らに連帯責任を負わせるなど取締役の責任を厳格化する趣旨の規定であることなどを考慮し,同条1項5号に基づく取締役の責任は,法によってその責任が加重された特殊な債務不履行責任であって,単に契約上の債務がその態様を変じたにすぎないものということはできないから,前掲昭和47年最判の射程は及ばないと解したものと考えられる。判例は,一般に,基礎となる行為の商行為性,法律により生じる債権か否かといった形式的基準だけでなく,迅速決済の実質的要請の有無にかかる規範的な評価に従い,個別具体的に判断していると考えられる。

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