重要判例解説(25);最高裁判所平成20年2月22日判決

1 事案の概要
本件は,Xが,Yに対し,所有権に基づき,X所有の不動産に設定された抵当権設定登記の抹消登記手続を求める本訴を提起したところ,Yが,当該抵当権の被担保債権として,Xに対する貸付金債権を有している,または,Yに対する第三者の借入金債務をXが連帯保証しており,Xに対する連帯保証債務履行請求権を有していると主張して,Xの請求を争うとともに,Xに対し,貸付金残元本等の支払を求める事案である。Yは会社であるところ,Xは,YがXに対して有する債権が商事債権であり,既に弁済期から5年が経過していることから,本件では,商事時効を援用した。
原審は,まず,Yの代表取締役は,小中学校の同窓であり,親交のあったXからの依頼を受け,「男らしくバンと貸してやるという気持ち」で,YにおいてXの依頼に応じることとし,Xが竹馬の友であることを強調して,Yの経理担当者をして,Yがその取引銀行から融資を受けるための手続をさせ,融資を受けた金銭をYがX等に貸し付けたものであるから,Yの営業とは無関係にXに対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるなどとして,本件貸付けに係る債権の商事債権性を否定し,商事時効の成立を否定した。

2 判旨
破棄差戻し。
「会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条),会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と同義と解される。)。
前記事実関係によれば,本件貸付けは会社であるYがしたものであるから,本件貸付けはYの商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり,本件貸付けがAのXに対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,1億円の本件貸付けがYの事業と無関係であることの立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しないことは明らかである。
そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同債権には商法522条の適用があるというべきである。」

3 解説
本判決は,会社による金銭の貸付けが商行為にあたるかが問題となった事案において,会社は商法上の商人に該当し(商4条1項),その行為はその事業のためにするものと推定されるから(商503条2項),会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと判示したものである。
会社法の施行前,旧商法503条2項は「商人ノ行為ハ其営業ノ為ニスルモノト推定ス」と規定しており,この規定は,講学上の暫定真実であると考えられていたが,会社の行為については,すべて商行為であり,会社には旧商法503条2項の推定規定の適用の余地はないと解するのが圧倒的な通説であった。
この点に関する判例としては,大判大正3年6月5日民録20輯437頁,最判昭和29年9月10日民集8巻9号1581頁,最判昭和51年7月9日裁判集民118号249頁等があり,圧倒的な通説とは異なり,会社の行為についても旧商法503条2項の推定規定の適用があることを前提とする説示をしており,会社法施行前の判例は,会社の行為が商行為に該当することの主張立証責任について,本判決と同様の見解を採っていたということができよう。
一方,現行会社法および現行商法の下では,会社が商人に該当するかについては,多くの学説が,会社法5条の規定により,会社は,「商行為をすることを業とする」こととなるから,その事業目的にかかわりなく,商人となる(商4条1項)ものと解している。商人に適用される商行為法の規定(507条等)を会社の行為に適用するためには,会社が商人であることが必要であると解される。
そして,会社が商人であるとすると,商法503条2項の規定が会社の対外的行為に適用されるか,その前提として,その事業としてする行為にもその事業のためにする行為(附属的商行為)にもあたらない会社の行為があるかが問題となるが,この点について,学説の多数説は,会社は生まれながらの商人であり,その生活はもっぱら事業のために存し,個人商人のような私生活がないから,その行為は常に事業のためにするものとなり,商法503条2項の規定を会社の行為に適用する余地はないとする。これに対して,有力説は,会社も社会的実在として存在しかつ活動している限り,事業生活以外に一般社会人としての生活領域が存しうるから(例えば,災害や社会的行事における寄付等),商法503条2項の規定を会社の行為に適用する余地はあるとする。
会社法5条は「会社が...その事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とする。」と規定しており,単に「会社の行為は,商行為とする。」などとは規定していないことから,本判決の基礎には,その事業としてする行為にもその事業のためにする行為にもあたらない会社の行為がありうることを前提としたうえで,会社の行為に商法503条2項の規定を適用し,附属的商行為性の推定(同条2項の「推定する」というのが同条1項の要件事実の証明責任を転換したものであると解することには,学説上も異論がない)を認めることには意味があるとの考え方があると考えられる。実務上も,会社の行為について商行為性を否定する余地を残しておく方が,結論の妥当性を確保する観点からも穏当のように思われる。
本判決は,本件貸付けについて,Yの代表取締役のXに対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,Yの事業と無関係であることの立証がされたということはできない等として,附属的商行為性の推定を覆しておらず,会社の行為の附属的商行為性が否定される場合をきわめて限定しているようには読めるところではある。

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