重要判例解説(26);最高裁判所平成20年2月26日判決

1 事案の概要
本件は,Y1社の発行済株式の560株のうち280株を6か月前から引き続き有するXが,Y1社の代表取締役であるY2が同社の経営を独断専行しているなどと主張し,Yらに対し,Y2の取締役解任を求める事案である。
本件では,会社法854条が,その文理上,在任中の取締役を解任の訴えの対象とすることを前提としていることから,その拡張解釈や類推適用により,既に任期の満了した取締役権利義務者を解任の訴えの対象とし得るか否かが問題となったが,1審・原審とも,取締役権利義務者を解任の訴えの対象とすることはできず,Xの訴えは不適法であるとして,これを却下すベきものとした。

2 判旨
上告棄却。
「会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(以下「役員権利義務者」という。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(以下「不正行為等」という。)があった場合において,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは,許されないと解するのが相当である。その理由は次のとおりである。
(1)同条は,解任請求の対象につき,単に役員と規定しており,役員権利義務者を含む旨を規定していない。
(2)同法346条2項は,裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(以下「仮役員」という。)を選任することができると定めているところ,役員権利義務者に不正行為等があり,役員を新たに選任することができない場合には,株主は,必要があると認めるときに該当するものとして,仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして,同条1項は,役員権利義務者は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ,新たに選任された役員には仮役員を含むものとしているから,役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても,株主は,仮役員の選任を申し立てることにより,役員権利義務者の地位を失わせることができる。
(3)以上によれば,株主が訴えをもって役員権利義務者の解任請求をすることは,法の予定しないところというべきである。」

3 解説
取締役権利義務者を解任の訴えの対象とすることができるかについては,会社法の制定前から議論があるところであり,東京高決昭和60年1月25日判タ554号188頁や名古屋地判昭和61年12月24日判タ634号216頁は,いずれも取締役権利義務者については解任の訴えの対象とすることができないものとしている。登記先例においても,取締役権利義務者の解任登記は受理しないものとされている。
この点についての学説は分かれており,取締役権利義務者については解任の訴えの対象とすることを否定するのが多数説である。
否定説(多数説)は,①解任の訴えの対象は文理上在任中の取締役とされていること,②取締役権利義務者は欠員を補充する暫定的な性格を有する者であり,これを解任の訴えの対象とすることは予定されていないこと,③既に任期満了等により退任している者を更に解任するというのは背理であること,④株主は,会社法346条2項に基づき仮取締役の選任を請求することで,取締役権利義務者の地位を失わせることができるから,取締役権利義務者を解任の訴えの対象とする必要性に欠けることなどをその理由とする。
これに対し,肯定説(少数説)は,①取締役権利義務者の専横を防止し,株主の利益を保護する必要があること,②取締役権利義務者が取締役のあらゆる権利義務を有しているのに,その解任の余地だけを否定するのは,バランスに欠けること,③会社法346条2項の仮取締役の選任は非訟手続で行われるものであり,取締役権利義務者に反論の機会が十分に与えられていないから,この手続をもって取締役権利義務者の地位を失わせることができるとすることは適当でないこと,④取締役権利義務者を解任の訴えの対象とすることができれば,この訴えを本案とする職務執行停止の仮処分を活用することができることなどをその理由とする。
本判決は,会社法854条の文理上,解任の訴えの対象につき取締役権利義務者を含む旨を明記していないことや,株主は,利害関係人として,仮取締役の選任を申し立てることによつて,取締役権利義務者の地位を失わせることができることからすれば,取締役権利義務者を解任の訴えの対象とすることは,法の予定しないところというべきであることなどを理由として,判決要旨のとおり述べて,原審の判断を正当として,Xの上告を棄却し,学説上の多数説(否定説)を採ることを明らかにした。
実際問題としても,本件判旨に対しては,株主があえて解任の訴えを仮に取締役権利義務者に対する解任の訴えを認めてY2の解任判決を得たとしても,Y1社では再び必要数の取締役を欠く事態に陥り,結局は仮取締役の選任を申し立てるほかなくなるから,否定説に分がある。
本件Y1社は,株主がXとY2の2名だけから成り,しかも両者の所有する株式数が同数である,いわゆる二人会社である。Y1社では,株主XとY2の対立が続く限り,新役員の選任決議(会社341条)は成立せず,肯定説の主張するように,役員権利義務者について解任の訴えの被告適格を認めて,解任判決を得たとしても,新たな正規の役員を選任することができない。二人会社におけるデッド・ロックの抜本的解決策としては,紛争当事者の一方が他方に株式を売却して出ていくか,株主Xが会社の解散の訴え(会社833条)を提起して解散判決を得ることによって,Y1社を解体して株主X・Y2間で残余財産を分配することになると考えられる。

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