最新判例解説(11);最高裁判所平成21年3月31日判決

1 事案
平成13年2月15日,A農協ら4つの農協(以下,「旧4農協」)は,同年9月1日に合併してB農協を新設する旨の契約(以下,「本件合併契約」)を締結した。
本件合併契約には,合併日における被合併組合の貸借対照表等に故意重過失による誤びゅう等があったことによって新組合が損害を受けたときは,その損害を与えた被合併組合の役員が各個人で連帯して賠償責任を負う旨の条項(以下,「本件賠償条項」)が規定されていた。
A農協は,同年2月25日の臨時総会で本件合併契約の承認決議を行い,同年5月16日に開催された通常総会で,2億5400万円弱の貸倒引当金を計上した平成12年度の貸借対照表などが承認された。また,平成13年度の貸借対照表には2億6500万円余の個別貸倒引当金が計上されていた(同年8月31日現在)。
ところが,合併後に,A農協の貸倒引当金が過少計上であったことが判明した(約3億8500万円の不足があった)。
そこで,B農協の組合員であるX1ら(原告・控訴人・上告人)は,平成15年6月26日,本件賠償条項に基づき,A農協の役員(理事・監事)であった者らに対して,農協の貸倒引当金不足額等の支払を求める訴訟の提起を請求する書面(以下,「本件提訴請求書」)を,B農協に送付した。このとき,本件提訴請求書には,本来宛先とされるべき感じではなく,代表理事Y1(被告・被控訴人・被上告人)が代表者として記載されていた。
Y1は,同月30日の理事会でこの書面を読み上げ,理事・監事とともに訴訟提起の要否についての審議を求め,同年7月23日には一旦監事立会いの下で訴訟提起の決議をしたが,同年12月22日には提起しない旨の決議をし,結局その後訴訟を提起してなかった。
X1らは,平成16年2月17日,Y1~Y6及びY7ら(A農協の役員であった者またはその相続人。Y1~Y6はX1の提訴請求当時にB農協の理事であったが,Y7らについてはそうではなかった。被告・被控訴人・被上告人)に対して,A農協の貸倒引当金不足額をB農協に支払うよう求める組合員代表訴訟を提起した。
 原審は,本件提訴請求書の宛先が誤っていたことから,Y1~Y6に対する部分については適式な提訴請求を欠いた不適法な請求であるとして却下し,Y7らに対する部分については本件合併契約の当事者ではないから特段の事情が無い限り本件賠償条項に基づく損害賠償責任を負わないとして棄却した。

2 判旨
一部破棄自判,一部破棄差戻し
ⅰ 農業協同組合の組合員が,理事に対する代表訴訟につき組合の代表者として代表訴訟を記載した提訴請求書を送付した場合であっても,「監事において,上記請求書の記載内容を正確に認識した上で当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったといえるときには,監事は,農業協同組合の代表者として監事が記載された提訴請求書の送付を受けたのと異ならない状態に置かれたものといえるから,上記組合員が提起した代表訴訟については,代表者として監事が記載された適式な提訴請求書があらかじめ農業協同組合に送付されていたのと同視することができ,これを不適法として却下することはできない」。
ⅱ 被告のうち「A農協の理事会に出席して同農協が本件合併契約を締結することに賛成した理事又はこれに異議を述べなかった監事に該当する者については,本件合併契約の中に,......本件賠償条項が含まれていることを十分に承知した上で,A農協が本件合併契約を締結することに賛成するなどして,その締結手続を代表理事にゆだねているのであるから,同農協の代表理事を介して,旧4農協に対し,個人として本件賠償条項に基づく責任を負う旨の意思表示をしたものと認めるのが相当である。また,旧4農協においても,本件合併契約の締結に至っている以上,上記の意思表示について承諾したものと認めるのが相当である。」
ⅲ 旧4農協の貸借対照表の記載の誤りのためB農協に資産流出などによる具体的損害が生じた場合に当該農協の役員は軽過失でも責任を負うこと(旧農協33条2項・39条2項)に照らせば,本件賠償条項についての原審の解釈は当事者の合理的意思に合致しないこと,本件合併契約はB農協が旧4農協から貸借対照表等どおりの財産を継承することを前提としていること,A農協臨時総会で同農協参事がした説明,A農協・B農協とにおける不良債権の適正評価・必要な引当金の計上・財務の健全性確保・自己資本比率の維持向上の重視といった「事情に照らすと,本件賠償条項は,不良債権が適正に評価され,必要な貸倒引当金が計上されていることを含めて,旧4農協の貸借対照表等が正確であることを担保する趣旨の定めというべきであり,旧4農協のうちのいずれかの農業協同組合において,不良債権が適正に評価されておらず,貸倒引当金が過少に計上されていることが判明した場合には,過少に計上したことに故意又は重過失のある当該農業協同組合の理事及び監事に対して,引当不足額相当額をB農協にてん補する義務を負わせる趣旨を含むものと解するのが相当である」。

3 解説
本件では,まず,本件提訴請求書の宛先が監事ではなく代表理事であったことから,適式な提訴請求がなされたか否か,ひいては,代表訴訟が適法であるか否かが問題となった。この点について,本件判決は,監事がその請求書が提訴を求めている訴訟を提起するか否かについて検討する機会を実質的に得たのであれば,宛先が間違っていたとしても不適法とはならない旨を示した。
次に,本件賠償条項に基づいて役員らが貸倒引当金の不足額を填補する責任を負うかについては,本件賠償条項は本件のような場合に役員らに不足額を填補する義務を負わせることも含む趣旨の規定であり,これを含む本件合併契約を締結することについて理事会で賛成ないし異議を述べなかった役員らは,この責任を負う旨の意思表示をしたものとしてどう責任を免れないと判示したのである。

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