最新判例解説(15);最高裁判所平成22年3月16日

1 事案
Aは,Y(被告・被控訴人=控訴人)が平成10年から13年にかけてB会社に行った①~⑤の5口の貸付について,連帯保証した。この際に,債務の全部を消滅させるに足りない弁済がされた場合は,Yが任意の時期に適当と考える順序方法により充当することができる旨の特約を定めた。
また,①の貸付の際には,BとCが共有する本件土地及びBが所有する本件建物について,Bを債務者,Yを債権者とする根抵当権が設定された。
A・Bは,平成17年12月,破産手続開始決定を受け,Aの破産管財人としてX(原告・控訴人=被控訴人・被上告人)が選任された。
Aの破産手続において,Yは①~⑤の貸付に係る保証債権合計1億2667万5955円(約定利息と破産手続開始決定の前日までの遅延損害金を含む)及び同決定の日以降の遅延損害金を破産債権(以下,「本件破産債権」)として届け出て,本件土地及び本件建物を任意売却した代金から1億2513万8815円を受領した。
これは主債務者Bの持分と物上代理人Cの持分それぞれの代金からの弁済の合計額であり,前者は①~⑤の遅延損害金及び約定利息並びに①②の残額及び③の残額の一部(2978万円のうち2329万2158円)に充当され,後者は③④の残額(③は前記充当で残った648万7842円について)及び⑤の残額の一部(2244万4000円のうち1560万2602円)に充当された。
平成18年10月,上記の弁済を受けているにもかかわらず,大阪地裁堺支部が本件破産債権を1億2667万5955円と査定したことから,Xが破産債権査定異議の訴えを提起した。
Xは,個々の債権について一部のみ弁済されている場合にのみ破産法104条の開始決定時現存額主義が適用されるのであるから,債権①②③④について全額弁済されている本件において同上が適用されるのは⑤のみであり,本件破産債権の査定額は2244万4000円となると主張した。
一審は(大阪地判堺支平成19年6月15日),本件任意売却の結果,Bの持分に相当する額については主たる債務者であるBが弁済したといえ,これによりYが充当した①②の債権が消滅しAの保証債務も附従性により消滅したと解した。これに対して,Cの持分に相当する額については物上保証人Cが弁済したといえるが,当該根抵当権の被担保債権である債権全部が弁済されない限りは開始時現存額主義が適用されるとして,③④⑤に係る保証債権全額の7831万2000円と査定した。
原審では,複数の債権を有している場合にまで開始時現存額主義が適用されると解するのは相当ではないとした。原審では更にYの弁済充当指定権の行使時期についても問題とされた。すなわち,Yが,物上保証分の弁済についての充当を留保した上で,仮に開始時現存額主義の適用についてXの主張が認められるのであれば,特約に基づく弁済充当指定権を行使して,物上保証分の弁済を債権③④⑤に按分して充当することでいずれの債権も一部弁済の状態となるようにすることで,③④⑤の届出額について配当を受けられるようにする旨主張したことの当否が問題となったのである。
そして,原判決(大阪高判平成20年4月17日)は,この点について,破産手続の迅速適正な処理のために弁済の充当も極力速やかに確定されるべきであるとして,本件でYが物上保証分についての弁済充当指定権を行使するのは信義則上許されないとした。この結果,Yには⑤の一部である684万1398円が残り,開始時現存額主義が⑤に適用される結果,破産債権は⑤の届出額である2244万4000円であると査定した。

2 判旨
上告棄却(なお、田原睦夫裁判官の補足意見がある)。
 「本件弁済充当特約は、民法488条1項に基づく弁済者による充当の指定を排除するとともに、同条2項ただし書に基づく弁済受領者による充当の指定に対する弁済者の異議権を排除することを主たる目的とする合意と解すべきであり、本件弁済充当特約において、債権者において任意の時期に充当の指定ができる旨が合意されているとしても、上記合意に基づき弁済受領後いつまでも充当の指定をすることが許されるとすると、充当の指定がされるまで権利関係が確定せず、法的安定性が著しく害されることになる。
 記録によれば、Yは、本件各弁済を受けてから1年以上が経過した時期において初めて、本件弁済充当特約に基づく充当指定権を行使する旨を主張するに至ったことが明らかであり、上記の時期に本件弁済充当特約に基づく充当指定権を行使することは、法的安定性を著しく害するものとして、許されないというべきである。」

3 解説  
本件判決は,複数の債権を有する場合の開始時現存額主義の適用,及び,特約に基づく弁済充当指定権の行使時期について,原判決と同様の判断を示している。
ただ,後者については,原判決が破産手続の趣旨から信義則違反を導いてYの弁済充当指定権の行使を否定したのに対して,最高裁は弁済受領後に弁済の充当を指定しないことで法的安定性が害されることを理由に,弁済受領から1年以上経過して
初めて弁済充当指定権を行使することは許されないとしている。

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